恭ちゃんが騒がれていようとちやほやされていようと、私に怒る理由なんてないしそんな必要もない。
そう思ってはみたものの、やっぱりイライラする気持ちは取り除ききれなくて。
わけが分からない面白くない気持ちに、口を尖らせて目を伏せる。
……きっと、恭ちゃんがあんなキスするからだ。
だから、こんな変なイライラを感じちゃってるに決まってる。
あんな……あんなキスされたら、誰だって気になるし!
恭ちゃんにとっては、日常のなんでもない事かもしれないけど、私にとっては、付き合ってもいない人にキスされたら大事件になるんだから。
ふと気づくと、恭ちゃんとの事を考えちゃったりしてるくらいに、支障が出てるんだから。
軽い気持ちとかでからかってるだけなら、本当にやめて欲しい。
うっかり恭ちゃんとのキスの事なんか考えちゃったせいで顔が熱い。
その顔を隠すように両手で頬を覆いながらため息をつくと、司会の生徒がプログラムを読み上げる。
「閉会の言葉」
まだ少しざわついている体育館内に司会の生徒の声が響いて、着任式の幕が閉められた。



