「関係ないよ、そんなの……。確かに話してたけど、ただ注意されただけで本当に何も……」

慌てて否定したけれど、それは今の恭ちゃんに素直に届くことはないみたいで……恭ちゃんの表情は冷たいまま変わらない。

「そうだよな。やましくても素直に言うわけねーよな。
……知ってたか? 俺の母親、父親がいない間によく男連れ込んでたって話」
「え……?」
「俺が父親んとこに戻った頃、ご丁寧に近所のヤツらが教えてくれたんだよ。
俺の母親は昼間男連れ込んで、それでも父親の前では平気で笑ってたって」

「女って平気で裏切るんだな」と吐き出すように言った恭ちゃんに、心臓を握られたみたいにひどく胸が痛んだ。
恭ちゃんの奥にある人格に、恭ちゃんの心の傷を見たような気持ちになったから。

だけど、そんな私の心配のつけ入る隙を与えずに、恭ちゃんが続ける。
冷たい目で、私を見下ろしたまま。

「実紅はそんな女にはならないと思ってたのに甘かったな」
「私は裏切ってなんか……っ」
「好きだった男に気にかけられて心配されて、少しも気持ちが揺るがないなんてあるハズないだろ」
「そんな事ないよ……っ。私はもう笠原先生の事なんて――」

突然、恭ちゃんの唇に口を塞がれる。
続けようとした言葉は恭ちゃんの咥内へ消えていき、代わりに恭ちゃんの舌が入り込んできた。