「痛い思いする事に慣れてるなんて、言わないで。
だけど、もし恭ちゃんが本当に慣れてるなら、私も慣れる。
何度でもお父さんに殴られて慣れる」

「恭ちゃんと一緒がいいから」そう言って微笑むと、恭ちゃんは顔をしかめて……つらそうに表情を崩した。

恭ちゃんが怯えているのは、私が離れていく事にじゃない。
この時そう思った。

恭ちゃんが怯えているのは、自分の中に流れる血だ。
その血に駆られた時、私を傷つける事が怖かったんだ。

お父さんがお母さんにしたように、同じことをするんじゃないかって。

恭ちゃんの、離れろっていうお願いに私が頷いたら、恭ちゃんは少しは楽になったのかもしれない。
だけど……やっぱり、何度聞かれても私には頷けない。

恭ちゃんが好きだから。
例え恭ちゃんがそれを望んでも、私は望めない。


「一緒にいたいから」

見つめる先で、恭ちゃんがつらそうに微笑んだ。