甘い愛で縛りつけて



インターホンの向こうの人物が、恭ちゃんのお父さんだって気づいたから。

小さい頃から恭ちゃんを追い回してきたけど、お父さんの事は見た事がないから確証はないけど……でも、恭ちゃんの態度からしてきっとそうだ。

何をしにきたんだろう……。
恭ちゃんはお父さんがこんな時間にきてもさほど驚いた様子はなかったって事は、たまに来ることがあるからだろうか。

まるで、来るって事を予測していたみたいに落ち着いていた恭ちゃんに疑問が浮かびながらも、心配からその後ろ姿を目で追いながら私も立ち上がる。

恭ちゃんが鍵を開けると、向こうからすぐに玄関ドアが開けられた。

「女が部屋に入って行ったそうだが。先週と今日の二度」

挨拶もなしにそう言ったスーツ姿のお父さんが、部屋の中を探るように見渡して私に視線を止める。
まるで睨むような瞳にビクっと肩を揺らすと、お父さんは顔をしかめた後、恭ちゃんに視線を戻した。

身体が震えるのは睨みつけられたからじゃない。
お父さんに、得体の知れない恐怖みたいなものを感じたからだ。

話してもいないのに、見ているだけで怖いと思った人なんて初めてだ。
空気が張り詰めるような緊張感が走っていた。