「お礼なんか言ってる場合か? 今の状況、分かってないわけじゃないだろ」
「え……?」
「俺に持ち帰られてるって、分かってるか?」

ドキドキ騒がしい心臓と許容量以上を摂取してしまったアルコールのせいで、頭の中が混乱してる。
しかも色っぽく微笑んだ恭ちゃんがどこまでも甘い声で囁いたりするから、余計に何も考えられなくなっていて。

まだ残っているアルコールと恭ちゃんの存在のせいでクラクラしながらも、なんでこんな近づいたままなんだろうなんて思っていた直後。
ぐっと近づいた恭ちゃんの唇が私のと触れた。

あまりの出来事にびっくりして停止してから、ハっとして恭ちゃんの胸を押す。

「え、なに……?」

ぽかんとしたまま言うと、恭ちゃんは悪びれもせず答えた。

「なにって、キスしただけだろ」
「違うっ。何したかって事じゃなくて、なんでキスしたのか聞いてるのっ!」
「なんでって別に不思議でもなんでもないだろ。
おまえ、俺に持ち帰られてるんだから」
「持……」

そう言えば、さっきもそんな事言ってた気がする。
『持ち帰られてるって、分かってるか?』って。