「気分、よくなったか?」
「あ……」

なんとなく、固定概念からベッドの後ろは壁だと思ってたけど、どうやら私の寝ていたベッドは部屋の中央にあったらしくて。
振り向いた先には二人掛けのソファと、小さなテーブルと……恭ちゃんの姿があった。

部屋の中央にベッドってどんな配置だ。ありえない。

「実紅。気分は?」

寝ていたせいでリフレッシュしてしまったのか、恭ちゃんへの免疫が消えてしまっている気がした。
だからか、視線の先で涼しい顔して煙草を吸う美形が“恭ちゃん”だって事が再び信じられない気持ちになる。

「そこまで悪くはないかも……。あの、私どうしてここで寝てたの?」
「たいして飲めもしないくせに無理して飲むから、酔ってそのまま寝たんだよ。
気持ち悪いって言った後しゃがみ込んで、しばらくして動かなくなったと思ったらそのまま」
「そう、なんだ……。恭ちゃんが運んでくれたの?」
「他に誰が運ぶんだよ。
このホテルたまたま会計が退室時で自由に部屋入れたけど、万が一人に見られてたから完全に通報モンだからな。
気失った女ホテルに運んでるとか事件にしか見えねーし」
「……すみません」