「おまえ、俺の事が好きなのか?」
まだ伝えてもない気持ちを恭ちゃんに言葉にされてしまって、小さく肩が跳ねる。
好きなのかって聞かれて、ようやくさっきの言葉を復唱された意味が分かった。
恭ちゃんは私の気持ちを確認してたんだ。
まさか、普通に話してるだけなのに気持ちが漏れてるなんて思わなくて、バツが悪くなって目を逸らす。
知らないうちに告白してしまっていた事が、まるで恭ちゃんへの気持ちの大きさを物語っているようで、今さらだと思いながらも恥ずかしかった。
「だとしても……もうダメなんだよ」
「実紅」
「だって、桜田先生が……っ」
「実紅。ちゃんと答えろ」
恭ちゃんの低い声に咎められて、思わず黙る。
私が恭ちゃんを好きだって、もう関係ない話だ。
どちらにしたって、バレてる以上私たちがこの先どうこうなる事は許されない。
だったら気持ちを隠してた方がいい。
そう思うのに……。
恭ちゃんがまるで自分が正しいっていうように真っ直ぐな瞳で私を見据えて、私の逃げ道を遮る。
恭ちゃんにじりじりと追い詰められている事に耐えきれなくなって、ギュっと結んでいた口をゆっくりと開いた。
逃げられない。
こんな風に恭ちゃんに見つめられて、逃げられるわけがないじゃない……。



