甘い愛で縛りつけて



自分の口走った事を誤魔化そうにも、頭のキレる恭ちゃんはきっと、今ので大体の事に気づいたに違いない。
それでもどうにかして誤魔化せないか考えている私の腕を、今度は恭ちゃんが掴んで……そのまま足早に歩き始めた。

引きずられるようにホームの階段を下ろされる。
何度か恭ちゃんの名前を呼んだけれど、恭ちゃんは無反応で。
私の呼びかけに答えてくれる気はないみたいだった。

怒っても見える恭ちゃんの横顔に、抵抗する事もこれ以上呼ぶ事も諦めたけれど。

駅から出て2,3分くらい歩いたところ。
恭ちゃんが入ろうとした場所に、思いきり抵抗して踏みとどまる。

そんな私を、機嫌悪そうに顔をしかめた恭ちゃんが振り返った。

「なんだよ、実紅。早く入れ」
「入れって……なんでホテルなんか……」
「ああ、警戒してんのか。違ぇよ。話聞くだけ。
他のヤツにふたりでいるの見られたり会話聞かれたらマズイんだろ? 俺にも黙ってたくらいなんだから」

意地悪と不機嫌の狭間にいるような恭ちゃんの言葉が、ずしりとのしかかってくる。
私が黙っていた事をかなり怒っている様子の恭ちゃんに観念して、恭ちゃんに引かれるまま歩き出した。

部屋に入っても私の腕を掴んだままだった恭ちゃんが、部屋中央まで歩いたところで、ようやく腕を離した。