「先週、何かあったのか?」
恭ちゃんが言っているのは、桜田先生が保健室を出て行った後の事だ。
桜田先生が出て行って数分後に戻ってきた恭ちゃんは、私と桜田先生の会話や条件を知るはずもなくて。
いつも通りの恭ちゃんに、胸がギリギリと締め付けられるのを感じた。
私はとてもじゃないけど、いつも通りなんてできるわけもなくて。
急いで着替えてから、お礼だけ言って目も合わせずに保健室を後にした。
そんなあからさまな態度を取ったんだから、恭ちゃんが気にしていても当たり前だ。
「……別に何も。あ、ちょっとだけ体調が悪かったから、そのせいかも」
曖昧に答えると、隣に並んだ恭ちゃんに顔を覗き込まれる。
「なんで目合わせようとしないんだよ」
「別に……なんとなく」
「なんとなくだったら目合わせろ。できんだろ」
「恭ちゃん、口調。猫かぶっておかないと他の人の目もあるでしょ」
購買近くの廊下で、生徒どころか教師も通るのに恭ちゃんが乱暴な口調で言うからそれを注意する。
チラっと見上げると、恭ちゃんは面倒くさそうに顔をしかめていた。
細められた視線がこっちに向けられて、慌てて逸らす。



