球技大会のお礼か……。あの時はまだこんな事になるなんて思わなかったな。
そんな事を思っているうちに、急に気分が落ち込んでいってしまってため息をつく。
恭ちゃんに、どんな顔をして会えばいいんだろう。
次会ったらきっと、告白の返事を催促される事は予想ができた。
私は……ちゃんと恭ちゃんを騙せるのかな。
好きじゃないなんて、ちゃんと言えるかな。
私がそう答えた時、恭ちゃんがどんな顔をするのか。
考えただけで胸が破裂しそうに痛かった。
こんな風に思うのが、私のうぬぼれだったらいいのに。
そう思わずにはいられなかった。
私の勘違いで、恭ちゃんは私をなんとも思ってなければいい。
そうすれば、私が恭ちゃんの気持ちを拒絶したってただの笑い話で済むんだから。
うぬぼれんなだとか、一人で空回ってるとか笑われてもいいから。どんなにバカにされたって構わないから。
恭ちゃんを……傷つけたくない。
「実紅」
購買でひとつパンを買ってから、事務室に戻ろうとしていた時、後ろから声をかけられて肩がすくんだ。
いきなりだったからじゃない。
声の主が誰だか、瞬時に分かったからだ。
振り向けないでいる私に、恭ちゃんの足音が近づく。



