甘い愛で縛りつけて




「あ、河合ちゃん! この間の活躍のお礼にジュースおごるよ」

球技大会の翌週、購買を通りかかった時、小川さんにバッタリ会った。
購買の紙袋を持ってるところを見ると、小川さんもパンを買いにきたらしい。

「ありがとう。気持ちだけもらっておくね」
「そんな事言わずにジュースももらってよ」
「だってさすがに生徒に奢ってもらうなんてできないから。私が怒られちゃうし」
「えー、そうなの? あ、じゃあコレあげる」

残念そうに顔をしかめた小川さんが、購買の紙袋の中を手で探る。
そして、取り出したひとつのパンを私に差し出した。

「バターバンズ買ったんだけど、私今日来る時コンビニで新商品のパン買ってきたんだよね。すっかり忘れちゃってて。
買ってから思い出したんだけど、返品できないとか言うからもらってくれない?」
「あ、じゃあお金払うよ。70円だっけ?」
「いいのいいの! どうせ無駄にしちゃうだけだからもらっておいてよ。ね」

笑顔で言う小川さんに、少し迷ってから、じゃあとパンを受け取る。

「ありがとね。お昼代助かっちゃった」
「ううん。こちらこそー」

そう笑った小川さんが、手を振って教室に戻って行く後ろ姿を見てから、購買に並ぶ。