『何を言えば、俺の事信じてくれる?』なんて。
『俺はおまえ以外考えられない』なんて。
簡単に言わないでよ。
それに……。
「私の返事くらい、聞いてよ」
言い逃げなんてズルい。
私ばかりドキドキさせられて、ズルいよ。
まだキスの体温が残る唇にそっと指で触れる。
恭ちゃんが手当しくれた肘の傷。洗ってくれたジャージ。恭ちゃんが触れた唇。
全身が恭ちゃんに包まれている気がして、顔が熱を持つ。
絆創膏だとか白衣だとか、そんな事がどうしょうもなく嬉しいくらい、私は恭ちゃんの事を――。
胸の前にあてた手をぎゅっと握りしめて地面を見つめて考えていた時。
ガラガラと音を立てて保健室のドアが開いた。
突然開いたドアに、恭ちゃんの姿を期待して顔を上げたけど……そこにいたのは、恭ちゃんじゃなかった。
「桜田、先生……」



