「恭ちゃん、本当に自分で行けるから」
「いいから、おとなしく待ってろ。そんな格好のまま校内ウロウロされたくない。
誰が見てるか分からないだろ」
「でも……」
そこまで甘えるわけにもいかないし、と思いながら顔をしかめると、恭ちゃんが困り顔で笑った。
「例えたいしてない胸でも色気のない下着でも、実紅のを他の男になんか見せたくないんだよ」
前半部分は完全に悪口なのに、後半の言葉にその悪口が打ち消される。
嬉しい気持ちが顔に出るのがイヤで唇をかむと、恭ちゃんはそんな私に笑顔を残して、保健室から出た。
ピシャってドアが閉められてしばらくしてから、その場にぺたりとしゃがみ込んで両手で顔を覆った。
静かな保健室に、自分の心拍音が異常なほど大きく響いている気がした。
恭ちゃんのせいで、絶対に寿命が縮んだと思う。
なんで恭ちゃんはいちいち私をドキドキさせるような事ばかりするんだろう。
あんな熱いキスも、甘い言葉も、柔らかい微笑みも。
全部が私を過剰なほどにときめかせて逃がしてくれない。



