「なんだよ」
脳内パニックから生まれた疑問に、慌てていた気持ちが一気に冷めて冷静になる。
じろって感じで恭ちゃんを見ると、顔を軽くしかめられた。
「前……ホテルに入った時も思ったけど、恭ちゃん、女慣れしてるよね」
「は?」
「なんか、私が何言っても全然動じないで涼しい顔してるし」
「それ、今関係あるか?」
「キスだって、慣れてるっぽいし」
「つーか、俺の質問に答えるのが先だろ」
少しイライラしてるようにも聞こえる恭ちゃんの声。
昔は穏やかな声しか聞いた事なかったし、再会してからは軽い口調ばっかりだったから、こんな風に感情的な声は珍しいかもしれない。
けど、私は恭ちゃんの倍イライラしてると思う。
床に膝をついて私を見上げるようにしている恭ちゃん。
その手はまだ私の腰に巻きついていて、複雑な苛立ちが襲う。
恭ちゃんに触られるのは嬉しい。
けど、誰か他の人にも触った手で同じように触られてるんだって思ったら、マイナスな感情が生まれてきちゃって。
こんなのただのわがままだっていうのは分かっていても、やきもちを止められなかった。



