恭ちゃんはズルい。
恭ちゃんの表情に、言葉に。
私が惑わされてるって知ってる。
恭ちゃんの声に、触れ方に。
私が動けなくなるのを分かってる。
私が恭ちゃんに逆らえないのを分かってて優しくする恭ちゃんは、ズルい。
「もう、俺のキスに慣れたか?」
唇が触れる直前、そう聞かれる。
慣れるハズがない。
そう答えようと口を開いたけど、恭ちゃんの唇にすぐ塞がれて言葉にならなかった。
いつもは荒っぽい口調のくせに、いつでも優しく触れる、恭ちゃんの唇や指。
まるで私を想ってくれているように感じるキスに、私も目を閉じて……いつの間にかそれに応えていた。
自分の気持ちに気づいた以上、逆らうなんて無理だ。
しかもこんな甘いキスされて、抱き締めらえて触れられて。
……触れられて?
キスに夢中になっていた頭が、ふっと現実に引き戻される。
恭ちゃんの手が胸に触っている事に気づいたから。



