「あーあ……。これ、消毒したら痛そうだなぁ」
近い距離からじっと見つめられたせいで心臓が飛び跳ねるから、動揺をなんとか隠そうと、壁に掛かっているカレンダーに視線を定めた。
……こういうの、心臓に悪い。
恭ちゃんは、治療してるだけなんだけって言うけど、私は色々意識しちゃうし。
そう考えて、ちょっと虚しくなる。
こんな至近距離を意識しているのは私だけで、恭ちゃんはなんとも思わないんだって気付いたから。
それが悔しいようで、寂しく感じた。
恭ちゃんにとっては治療は仕事なんだし、それは当たり前の事かもしれないけど。
なんだかんだ言いながらも、私は多分、期待していたのかもしれない。
治療と称してナニかをされる事を。
何考えてるんだと自分自身に激しく突っ込みを入れる。
恭ちゃんを好きなんだから少しくらいは仕方ないとは思うけど、ここは学校だ。職場だ。
誰が見てるか分からないこの場所でそんな期待しちゃマズイのに、恭ちゃんでもないのに何をそんな……。
完全に暴走している思考をどうにかしようと、ひたすらカレンダーの数字を頭の中で繰り返し繰り返し読んで心を落ち着かせる。
そうしながら、ドキドキしてる胸に気付かれないように、平常心を装って静かな呼吸を繰り返した。



