甘い愛で縛りつけて



「河合ちゃんって、学生の時何部だったの?」

桜田先生のクラス相手にする第二試合が始まる10分前、小川さんに聞かれた。

第二試合には小川さんが出るっていうから、ここまできたら応援して行こうと思ったんだけど……。
そのせいで、とんでもない事に巻き込まれる羽目になる。

「バスケ部だよ。あ、でも補欠だったし、全然……」
「えっ、本当に?! じゃあ加勢してよ!」
「加勢って……無理だよっ、これは生徒のための行事で私はただの事務なんだから」
「大丈夫だって。男子の方、田口さんも出てたもん」
「え……っ、田口さんが?」
「うん。出てたよ。かえって足引っ張ってたけど」

田口さん、いいのかな……。
生徒の行事なのに出ちゃうとか、一応クラス順位もつくんだから普通に考えればダメに決まってるのに……さすがKY。

「あ、でも私は仕事があるし、事務長に怒られちゃうから」
「さっき事務長も覗きにきてたけど、試合に混ざってる田口さんを応援してたよ。
生徒が楽しんでくれるなら、事務員貸し出すとも言ってた」
「え……」

まさか、仕事中にそんな事許すなんて……。
いや、でもグラウンドの様子を見てきてくださいって言い出したのは事務長だし、事務長なら確かに応援もしそうだし、しかも楽しみそうではある……。

大らかだし、こういうお祭り騒ぎが好きなのは、去年の文化祭で生徒のフォークダンスに混ざってた姿で確認済みだ。