周りからもボソボソそんな声が聞こえていた。
桜田先生の事は私も得意ではないけど、関わりも少ない分そこまでこだわって嫌ってるわけでもないから、あまりの言われように苦笑いがもれる。
だけど、次に聞こえてきた一言に、浮かべていた苦笑いが消えた。
「っていうか、聞いた? 桜田、保健医の朝宮狙ってるらしいよ」
「聞いたー! なんか空き時間になるたびに保健室行ってるらしいじゃん。しかも、すっかり彼女面っていうか、朝宮の世話とか焼いてるって話だし」
咄嗟に振り向いた私に、後ろで会話をしていた生徒がこっちを見る。
……ガングロにパンダメイクの有坂さんたちが。
「あれ、河合……さんも興味あり?
……あ、そっかー! そういえば親戚だって言ってたもんね!」
“河合”と“さん”の間が開いたのは、多分私がいないところでは呼び捨てで呼んでるからだろうな。
なんで生徒が教師を呼び捨てで呼びたがるのかは分からないけど、とりあえずそこは注意せずに頷く。
「あ、うん……まぁ」
「なんかねー、桜田、朝宮の事マジらしいんだぁ。お弁当作ってきて渡したり、仕事終わりの朝宮待ち伏せしたりしてるって噂。
っていうか、私も見たしー。一昨日の夕方、桜田がくねくねしながら朝宮の腕にひっついてるとこ」
……へぇ。



