「もー、桜田、本当にやだ。あんなのに負けるなんて耐えられないっ」

桜田先生は、男子生徒だけじゃなくて、男性教師からも人気がある。

ふわふわした大きなウェーブのかかった髪と、色気たっぷりの雰囲気、そしてキレイな顔。
最初、“マドンナ先生”なんて時代遅れにも思える言葉を聞いた時には、どんな先生かと顔をしかめたけど。

桜田先生は、本当にその言葉が似合うような先生だった。

「桜田、すっごい厚化粧なのに、そんなのに男子は騙されてて超やだ。
すっぴんとか超地味なんだよ。知ってた?」
「え、そうなの?」
「超しょぼいって。去年修学旅行行った先輩が言ってたもん。お風呂上がり見たら別人だったって」
「……へぇ」

濃いなぁとは思ってたけど、そこまでだとは思わなかっただけに少し驚いた。

でも言われてみれば、確かにファンデとか常にしっかりだし、アイメイクとかもばっちりだし。
何度か職員専用トイレで一緒になったけど、ずっと鏡の前を陣取っていてメイク直してたのを思い出す。