気をよくした司書の先生の声が少し高くなる。
先生は事務長と同じで、今年度で定年だって聞いた事があるけど……。

恭ちゃんの誘惑作戦は大成功みたいだった。

優しく微笑む恭ちゃんと、それにうっとりとした微笑みを向ける先生の顔が想像できて、こんな時なのに面白くない気持ちになってしまった。

「ところで、一か所気になる部分があったんですが、よろしいですか?」
「もちろんです。どこでしょう」

先生が立ち上がる音がしたから、その間に様子を見つつ入口に近づく。
そして、恭ちゃんと先生が何やら話している背中を確認してから、そっと部屋から抜け出した。

ドアを閉めたのに、頭の中に残る、恭ちゃんと司書の先生の笑顔。
演技とは分かっていても、先生に微笑みを向ける恭ちゃんに胸がチクって痛んだ。

自然と落ちたため息にハっとして……唇をかみしめる。

――突然すぎるから。
――恭ちゃんがキスしたから。
――事務長に言われたから。

そんなの全部言い訳だ。


再会してどんなに間もなくても、時間なんて関係ない。
私は……。

恭ちゃんが好きなんだ。