「前、言った通り、俺は今まで真剣に誰かを想ったりした事はない。
今までは、そういうスタンスが自分に合ってるからだと思って疑問に思った事もなかったけど……」

じっと見つめてくる恭ちゃんに、心臓が限界だと音をあげる。
期待に膨らんだ胸が、苦しくて破裂しそうだった。

「誰も真剣に想えなかったのは、ひとりに決めるのが無理だからじゃない
恋人だとか、そういう関係に縛られたくないからでも、遊びまわりたいからでもない」

注ぐ日差しが、やわらかく室内を照らす。
浮かんでいるホコリがキラキラと光る。

「ひとりを想えなかったのは、真剣に想える相手が見つけられなかっただけだ。
ここにきて……実紅に再会して、それに気づいた」

誤魔化してばかりの私とは正反対に、まっすぐに伝えてくれる恭ちゃんが、私の胸を熱くする。

やっぱり、逃げてたのは私の方だ。
恭ちゃんの真っ直ぐな瞳を見て、そう思った。

恭ちゃんと見つめ合っている間に見えてきた自分の気持ち。確信した想い。
戸惑いながらもそれを受け入れようとしていると、恭ちゃんがゆっくりと口を開く。
そして、「俺は」と言いかけた時。

ガラって音を立てて図書室のドアが開いた。