例えばここに君がいて



 それから一週間。体育祭の準備で俺は大忙しだ。
看板用の木材を買い込み、二組連合に割り当てられた理科準備室で組み立てる。そこにキャンバスを貼って二組所属の美術部員中心になって描いてもらうのだが、二組で美術部に入っているのはサユちゃんだけなので、人集めもしなきゃならない。

絵が得意そうなやつを募ってみるも、誰だって面倒くさい仕事はしたくないのか、なかなか人は集まらなかった。

結局最低でも一クラスから二人だぜーという通達を教師にしてもらうことでようやく落ち着いた。
うちのクラスは俺と新見。二年生はサユちゃんと彼女の友達の和奏先輩だ。


「さて、どんな図案にしようか」


二組のマスコットキャラはなぜか赤ベコ。福島で有名な赤い牛の工芸品だ。
誰の趣味なのかわからないが、三年生の方で盛り上がって決まったらしい。一度は反論を試みたが、三年生の押しの強さには敵わなかった。


「そもそも赤ベコをみて、やる気が湧くのかって話よ」


 冷たい口調で言うのは、新見明菜。
相変わらずのキツイ口調には辟易するが、看板描きの人員を募った時、皆全然やる気になってくれず困っていたら、「仕方ないわね」と申し出てくれたので頭が上がらない。

 まあ決まったものをグチグチ言っても仕方ない。建設的に行こう。俺も積極的に意見を出して、あわよくばサユちゃんにいいところを見せたい。


「すげーニヒルな顔にしてみたらどうだろう」


意気込んで言ってみたら、サユちゃんがくしゃりと笑う。


「あはは、ニヒルな牛って。私描けないよー」

「簡単よ。木下先生描けばいいんじゃない?」


ナイスツッコミ、和奏先輩。
確かにあの赤ジャージは鼻息荒い牛だよな!