例えばここに君がいて


「もしかして、サトルくんか?」


相変わらずイケメンのおじさんがソファから立ち上がる。


「そ、そうです」

「今日は俺とゲームしてもらうんだ! ほらほら、早く。イッサとルイも」

「こんにちは、お邪魔しまーす」

「……します」

ハツラツと挨拶するルイに、後ろで頭だけ下げるイッサ。

その後ろにはサユちゃんが続くはずだが、俺には見えない。


「サトルくん、悪いわね。ありがとう」

「いえ」


ゆったり会話する余裕もなくサイジの部屋へと引っ張られていく。
扉を閉める直前に、サユちゃんとご両親の会話が聞こえた。


「サトルくん。本当にサイジの相手をしに来てくれたの?」

「……そうみたい。これお土産だって」

「そうかぁ?」


おじさんの声に、本当は違いますと心の奥で返事をする。

そして、サイジとゲームにハマること一時間。
その間、すっかり俺に懐いたサイジは片時も傍を離れない。

ここに来ると、逆に俺が一人になれないということに今更気づいた。
何とかしてサユちゃんと話す機会を作らなければ。