「こうすると髪飾りみたいで綺麗だな」
違うわよ。
春色の鶴は私じゃない。
私には似合わない。
なにかが爆発したみたいに、反射的にその手を叩き返していた。
颯が、驚いたように目を丸くして私を見る。
「どうした?」
「別に」
落ちた鶴を拾って机に戻そうと思うのに、訳の分からない感情が胸の奥で暴れだして、私は拳に力を込めてしまった。カサカサと乾いた音が鳴り、再び手を開くとそこから潰された鶴が床に落ちた。
私は、夏目信也みたいにはなりたくない。
想いが叶わなかったからって、彼の相手を貶めるようなそんな女にはなりたくない。
だから、葉山先輩のことも好きになりたい。
彼女の持っているいいところを、好きだと思える自分になりたいのに。
「……っ」
なのに。
どうして心は思い通りになってくれない。
彼女が優しいことを、気遣い屋だということも、中津川くんのことを特別大切に思っているんだということも。
みんなみんなわかっているのに。
それでも時折、ぐしゃぐしゃにしてやりたいって思うくらい憎らしくなる。
そう、この春色の鶴のように。
「別に、じゃないだろ」
目の前の男は無機質な声でそう言い、しゃがみこんで鶴を拾う。
私は顔があげられなかった。
泣きそうになっているだなんて、自分でも認めたくない。
まして誰かに今の自分の顔を見られるなんてゴメンだ。



