「ラッキー」
ひゅう、と口笛を鳴らすなんとか颯。
「別にアンタと一緒に帰るなんて言ってないわよ」
「それこそ同じ方向だけど? 俺駅までいかなきゃだもん」
さっさと立ち去れよという威圧込みで睨んで見たけど、効き目はない。
コイツは最初っからそうよ。私の睨みにひるまない男なんて、今までにいなかったのに。
「私は一緒に帰らない」
「じゃあ、ただ俺も同じペースで帰る」
ほら。
何を言っても無駄って感じの返事。
これはあれだ。シカトが一番効果的な気がする。
「ところでさ、こっちの鶴は良かったのか?」
彼が薄折り紙で私が暇つぶしに折った鶴をつまみ上げる。色はたくさんあるけれど、薄いそれはどれも春の色のイメージだ。
そろそろ暮れてこようかとする空にかざしてみるととても綺麗。
「それはいいの。私が折ったものだし。自分だけで折るって願かけてたみたいだから」
「でもキレーじゃん。さっき葉山先輩がこれと同じの嬉しそうに見せてくれたけど。もしかして新見が先輩にあげたのか?」
中津川くんたちと居た時か。それを見せるために葉山先輩は中津川くんを待っていたのかも知れない。
「中津川くんを探しに来た時にね。喜んでた?」
「ああ、スッゲ喜んでた。弟に見せるんだとか」
「そう。あの色、葉山先輩ぽくて似合うなって思ったのよ」
喜んでくれたならいいことだ。
きっと中津川くんもそんな先輩に頬を緩めたことだろう。
考えこんでる私の耳元にカサリと音がした。
はっと気づいて見上げると傍に立った颯が、小さな鶴を私の耳にそっと挟んだらしい。
私とそれを見比べて、彼は満足気に笑った。



