例えばここに君がいて



 私が戻ってからも珠子は一心不乱に鶴を折り続けていた。もう疲れただろう。指の動きが悪くなってる。


「ちょっと自販機いってくるね」

「あーあたしのも買って」

「奢ってあげるわよ。いいからアンタは頑張りなさい」


珠子もなんだかんだと意地っ張りだから、と思うと、昨日の発言に少し罪悪感が湧いてくる。
財布を持って売店まで向かう。とは言え、売店自体はもう閉まっているので、自販機で買うのだが。

珠子が好きなのは甘ったるいミルクセーキ。私は、……何にしようかな。別にのどが渇いているわけでも無いので、なんでもいいのだけど。

お金を入れた状態で悩んでいると、足音が近づいてくる。
どこかの部活でも終わったのか足音は複数だ。

人と話す気分でもないので、早々に決めて立ち去ろうと適当にボタンを押すと、出てきたのはおしるこドリンクだ。


「……しまった」


やってから蒼白とかって凄い間抜けだ。よりによっておしるこドリンク。誰が考えたんだよって常々思っているこの謎の飲み物。


「あーそれ、結構旨いよな」


いつの間にそこにいたのか、振り向くと“なんとか颯”が立っている。


「マジ? じゃあアンタにあげる」

「お前飲みたくて買ったんじゃねーの」

「間違えて押したのよ」


おしるこドリンクを奴に手渡し、まだ小銭があったかなと財布を探っているとコインが投入された音がする。
見上げると飄々とした顔で彼が私を見ていた。