例えばここに君がいて



「……いいの?」

「何が?」

「明菜、サトルくんのこと好きだったんでしょ? なんで葉山先輩と仲良くしてるの?」

「ツンケンする理由が無いからよ」

「そうかなぁ。明菜はああいうタイプに結構冷たかったと思うんだけど」


まあ、そうね。
何が言いたいのか分からないようなタイプは苦手だ。
でも、彼女のことは知りたいと思っている。できるだけ彼女のいいところを。

知って知って、打ちのめされたい。
私なんかかなわないって思わせてほしい。


「……ちょっとトイレ行ってくる」


気づきたくない本心に気付いて、不覚にも心が揺らぐ。

珠子に弱いところなんて見せてなるものか。
私は逃げるように教室から飛び出した。

悔しい。
なんで私はまだ中津川くんが好きなんだ。

振り向いてもくれない男に、どうしていつまでもこだわらなきゃならない。

早く諦めたい。
だから彼女のいいところが知りたい。

私なんかかなわないって思わせて。

願いは自分が思う以上に切実で、胸を刻んでいく。