「それ、薄くて折りにくい!」
珠子は早々に敗北宣言で、普通の折り紙だけに手を出す。
仕方なく、私は暇つぶしも兼ねて、薄折り紙で鶴を折った。
折り紙の本でもあれば色々作れるけれど、そらで覚えているのは鶴くらいしか無い。
そのうちに、廊下の方から物音がする。ぴょこ、と顔を出したのは葉山先輩だ。
「あー、いないね」
「葉山先輩、誰か探してます?」
「新見さん、サトルくん知らない?」
予想した名前が、彼女の口から出てくる。
「さっき陸上部員が集められてたんで、多分どこかでミーティングかなんかしてると思いますよ」
「そっか」
葉山先輩は残念そうに肩を落とす。
サラサラと流れる長い髪。くりっとした目に見つめられると女の私でもドキッとする。いわゆる美人系の顔なんだろうけど、眉毛が濃いのが難点かな。でもそれも、人によってはチャームポイントと思ったりするのだろう。
「何してるの? 折り紙? わあ、これ綺麗だね。見たこと無い薄い紙」
「珍しいでしょう。ほら、この色なんか葉山先輩っぽい」
薄いピンクの折り鶴をかざす。
春みたいな優しい色は、ほわんとした空気を持つ彼女にピッタリだ。
「先輩にあげますよ」
「え? いいの?」
「珠子は普通の折り紙があればいいらしいから。先輩に似合いますよ」
「わあ、ありがとう」
薄いピンクの折り鶴を彼女は手で包むようにして嬉しそうに駆けていく。
葉山先輩の足音が聞こえなくなってから、珠子がボソリと呟いた。



