例えばここに君がいて


「ほら、チャイムなるわよ」


そう言うと中津川くんはあっさりと自分の席へと戻っていく。
名残惜しいなんで思われることはきっとない。
私は、……葉山先輩じゃないから。

 チャイムの鳴る直前に隣の席に戻ってきたのは、夏目信也だ。中津川くんと葉山先輩を取り合っていたけど、あっさり負けた男。


「あーもう、和晃の奴使えねー」

「なんで?」

「体育の授業中にサトルを陥れる計画立ててたのに。和晃の協力がなきゃ無理だー」

「どう陥れるのよ」

「バスケの授業中にサトルにだけボールを回さないとか」


言ってることが馬鹿すぎて、ズッコケそうになる。
前から馬鹿だ馬鹿だと思ってたけど、訂正するわ。お馬鹿大魔王だわ、コイツは。


「小学生じゃないのよ。振られたからって中津川くんに八つ当りするのやめなさいよ」

「うるせー。お前になら分かるだろ、俺の気持ち。少しは仕返ししないとやり切れないんだよ」


一瞬、息を飲んだ。
確かに分からないとは言い切れない。いやむしろ、分かるといった方がいい。

だけど。
だからってそんなことしようって思うのは最低じゃない。

どす黒い感情を押し殺して鼻で笑った声を出す。


「ばっかじゃないの。そんなんだからフラれるのよ。そんな暇があるならもっといい男になれば!」

「ああもう! お前は男前すぎてつまんねぇ!」


上等だ。
自分より女々しい男になんて興味はない。