例えばここに君がいて



 翌朝、珠子に折り紙を見せると、何故か放課後まで隠しておいてと言われる。
始業ベルが鳴るギリギリに松葉杖をついてやってきた和晃は、すぐにクラスの男子に囲まれた。


「何したんだよー、和晃」

「ケンカか?」


皆が武勇伝を期待して持ち上げるなか、中津川くんだけが「先ず座らせてやれよ」と気遣いを見せる。


「和晃、大丈夫?」


珠子は小走りに和晃のもとに向かった。


「おお、珠子ぉ!」

「痛い? ねぇ痛い?」


小動物みたいに和晃の周りをぴょんぴょん跳ねる珠子とデレデレの和晃に周りの男子生徒は引き気味になり離れていく。中津川くんも同様のようで、自分の席に戻る途中私の脇を通って言った。


「なんだかんだラブラブなのか? あいつらは」

「さあ? 今は珠子もそういう気分ってだけじゃない?」


昨日のあの一言は予想以上に珠子には効いたらしい。


「まあいいけどさ。和晃はなんで怪我したんだ?」

「部活中にバスケのボール入れに突っ込んだらしいわよ」

「あの金属のやつにか? 馬鹿だなー」

「馬鹿なのよ。でもそこがいいとこでしょ」

「まぁな」


中津川くんが、くしゃりと笑う。
そうやって、その人のあるがままを受け入れる彼が好きだった。
私が私のままでもいいと、彼ならば言ってくれるんじゃないかなんて、そんな期待をしたのは……


「……あてられただけだわ、きっと」

「ん? なんか言ったか?」

「何でもない」


そうよ。珠子と和晃がラブラブで、私はちょっと焦っていたんだわ。
恋なんてしなくても大丈夫なのに。
私は自分の力でなんでも出来るんだから。