例えばここに君がいて


恭一さんは珠子の家の隣に住んでる社会人で、珠子が生まれた時から片思いしていた相手だ。
中学卒業の頃に振られて、その頃告白した和晃と付き合い始めた。

和晃はずっと珠子が好きだったから、私は応援した。だけど、本気で和晃が好きになれないんなら、付き合うべきではないのだろうとも思う。
適当に付き合うには、和晃の本気度合いが強すぎる。何事にもバランスというものは重要だ。


『……ごめん』

「謝ることじゃないわよ。ただ、和晃のこと大事にしないなら別れればって思うだけ。まあ私が口出すことじゃないけどさ」

『好きだよ。和晃は優しいし。……あたし』

“ちょっと甘えちゃってるんだ。”


ポツリと続けられた一言は、素直な珠子らしい言葉で。私の怒りのボルテージは急速に降下する。


「そう。ならいいのよ」

『あ、そうだ。明菜のお母さん折り紙一杯持ってたよね』

「持ってるけど。……何なのいきなり」

『明日持ってきて! お願い』


そのまま電話は切れてしまう。
何を思いついたやらよくわからないけど、珠子が思い立ったら聞かないのも昔からなので仕方ない。


「お母さん、折り紙少しくれない?」

「いいわよー。これとこれと、あ、これも綺麗だから持って行きなさいよ」


“教育おりがみ”と書かれたいわゆるフツーの折り紙と、先ほどの薄い折り紙も一パックくれた。
珠子は喜ぶかもしれないと有りがたく受け取ることにする。

綺麗な半透明の折り紙。葉山先輩と中津川くんのイメージはこんな色合いだ。誰かの色を殺さず、重なり合えば新しい色を作り出す。

対して私はこっちの普通の折り紙だろう。はっきりしている私は明らかに原色系で、色を通すことを許さない。
中津川くんも葉山先輩となら二人で新しい色を作れるから好きなんだろう。私では、ただ相手を押さえつけてしまうだけだ。