例えばここに君がいて


「ははーん。お前ヤキモチを焼いているんだな。うんうん。若いな、まだまだ」


気にしてるところをえぐるなよ。
どうせ俺は年下だよ。大人にはなれねーよ。


「サトルくん。誤解しないで、今ね……」

「俺、イヤなんだよ!」


大声で言うと、サユちゃんはびっくりしたように目を丸くする。
しかも、周りの生徒たちも一気に俺達に視線を向けた。
それでも言い出したものは止まらない。俺は勢いのまま続けた。


「他の男にそんなに触らせんなよ。俺だって……」


そんなに触れないのに。
ああこれを言ったら自虐的。
つか、俺が触ったらあんなにすぐ真っ赤になるくせに、なんで木下だと平気なんだよ!


「あのね、サトルくん。先生は私の事心配してくれただけで」

「俺だって心配だよ!」


弾かれたように胸の不満がわき出した。サユちゃんは驚いたように俺を見返す。


「あんな噂になってるなんて。……俺、ずっと気づかなくて。サユちゃん……サユは、一言も俺に相談しなかったじゃないか」

「それは」

「俺はそんなに頼りにならない?」

「違うの。聞いて?」

「俺はっ……」


守りたいのに。
大人の男みたいに。君を何の不安も感じさせないように守りたい。
なのに実際彼女を守っているのは、木下やおじさんだ。
俺はそんな噂が広まってることすら気づけない。