「なんだよ、中村」
「葉山先輩って、休みの日に大人の男の人と腕くんで歩いてるのとかも目撃されてるらしいよ。もしかしたら木下先生かもね」
「嘘だろ?」
「さあ、本当かどうかは知らないけど、噂されるくらい仲いいのは本当よね? 男好きって噂も、私は本当じゃないかなって思う。中津川くんも遊ばれてるんじゃないの」
中村の視線の先の二人は確かに仲睦まじい。
職員室前を通る噂好きそうな女子の集団もそれを見て、コソコソと呟いていた。
あれじゃまた噂が広がってしまうかもしれない。
どうすればいい?
俺がサユちゃんの彼氏だ。
ここで中村にうろたえたところを見せてちゃいけない。
「彼女のこと悪く言うなよ。二人がどんだけ仲良くても、彼女と付き合ってるのは俺だし」
サラリと言い返すと、中村は馬鹿にしたように笑う。
「余裕ねー。まあ、中津川くんには新見さんもいるもんね?」
「なんでここで新見が出てくるんだよ」
「だって、二人はいい関係だったんじゃないの?」
「違うよ。あいつは友達。あっちだって俺のことなんかなんとも思ってねーよ」
それは嘘だけど。
きっとそのほうが早く噂も収束するはず。
「うわー。もしかしてかばってる? だってさ。新見さんに優しい男子って中津川くんくらいじゃん」
うるせぇ。ホントイラつく。
誰かこいつのことなんとかしてくれよ。



