「うわ、離せよ。ふたりとも」

「だってー。聞きたいよね、イッサ。相手はサユねーちゃんでしょ。ね、返事は?」

「……マル?」


呟くように尋ねるイッサに、頷くことで返事をすると、ヤツは満足したかのように俺から離れた。


「なんて言ったの。ねぇ。サユねーちゃんはなんてお返事したの」


納得しねぇ奴が一人、今も俺の腹の上で暴れている。
ギブギブ、死ぬから。つか、食ったもんが戻ってきそうだからやめてくれ。


「お兄ちゃん、ヘタレじゃなかったんだねぇ」


しみじみ言われるとなんだか傷つくな。


「とにかく、そんなわけだからもうこれ以上色々突っ込んでくんなよ」

「わかったけどぉ。ほら、ルイにお礼は? 私色々協力してあげたよねぇ。あー、ルイはイチゴのケーキが食べたいなぁ」

「お前っ」


勘弁してくれよ。俺だって金欠なのに。
これから、デートだって行きたいし、色々入用なんだよ。

その時、突然眼前にイッサの顔が現れて、俺は驚きのあまり飛び上がった。


「いてぇっ」


当然、覗きこんでいたイッサと激突し、俺もイッサもおでこを抑えて悶絶する。


「悪い、大丈夫かイッサ」

「うう……大丈夫。あの、俺」


死んだような目に涙を浮かべて、イッサは俺を覗きこんだ。


「ガトーショコラが食べたい」

「……ハイ」


そしてうやむやのうちに、双子にケーキを奢らなくてはならなくなった。