例えばここに君がいて



「お前への返事はちゃんと後でするから」

「ここでいいわよ。そのくらいの覚悟があって告白してるの、こっちは」

「俺達の話とサユちゃんの話は別物だろ。新見がしてることは八つ当たりだよ。サユちゃんを殴ったことは謝れ」


感情に任せてそう言うと、新見は一瞬怯み、それでも言い返してくる。


「嫌よ。どっちにしろ、私は葉山先輩好きじゃない。人当たりが良いって、結局誰ともなあなあにしか付き合わないってことじゃない」


お前ほどきっぱりはっきり付き合うヤツのほうが珍しいよ。
そう思ったけど、それは言えずに宥めに入る。


「だとしても、それは個性だ。他人の生き方を決める権利なんかお前に無いだろ」


これにはさすがの新見も言葉を失くし、一歩後ろに下がるとゆっくりと肩を落とす。
強気の女から覇気が抜け落ちると、こんなに頼りなく見えるものなのか。
罪悪感でギリギリと胃が痛い。

同じように感じたのか、夏目も慌てたように場に合わない明るい声を出した。


「な、何マジになってんだよー。落ち着けよな、新見。似合わねぇぞー」

「……うるさいわね。アンタは関係ないんだからもう出て行ってよ」


あっさりと新見に一蹴された。怖い。怖すぎる。
それでも、普段のトゲトゲした態度とは違う内面を垣間見てしまった今は、それが彼女の照れ隠しなのだと分かる。

出口を見失った俺達は、誰もが気まずい気持ちを抱えたまま、正四角形の形を崩せずに立ち尽くしていた。