例えばここに君がいて


普段、彼女から拒絶されたことのなさそうな木下は、サユちゃんのその剣幕に驚いたようだ。


「今大事な話してるから、先生は入ってこないで!」

「でも、なんか揉めてるんだろ?」

「大丈夫。まだ途中だから。先生が入ると話がおかしくなるから」

「なんだよ。俺に話せないようなことなのか?」


まるで恋人との会話のような二人の問答に新見が割って入る。


「生徒だけで解決しようとしているのに、わざわざ入り込んでくるのは、教師の自己満足でしかありませんよ」

「だって。俺は心配してるんだ……なあおい、サトル」


俺に助けを求めてくるけど知るもんか。
今はアンタ邪魔なんだよ。


「とにかく今はお呼びじゃないってことでしょう」

「お呼びじゃないって……酷いぞ、お前たち。とにかく、困った俺に報告に来るんだぞ?」


流石にこれ以上いても何の成果も望めないと分かったのか、木下は肩を落として教室から出て行く。


「行った?」


ホッとした様子で息を吐き出すのはサユちゃん。
新見は、そんな彼女を刺すような鋭さで見つめている。


「……木下先生がいた方が、先輩には有利なんじゃないんですか?」

「どういう意味?」


サユちゃんは、怪訝な顔をして新見に一歩近づく。

「木下先生はあなたに甘いじゃないですか。先輩はいいよね。いつも笑ってるから、先生ウケもよくって。何をやっても責められない」