『サトルくん? 驚いたな。一体どうした?』

「サユちゃん……いますか?」

『いるよ。……なんかあった? この間からサユがおかしいの、君が関係ある?』

「え?」

『いや、いいや。おい、サユ。サトルくんから電話』


意味深な言葉だけを残して、おじさんはサユちゃんを呼ぶ。
しばらくすると、人が近づいてくる気配がして、耳元に甘ったるい声が聞こえてきた。


『も、もしもし?』

「サユちゃん。俺、サトルだけど」

『どうしたの?』

すーっと息を吸い込んで、今度こそ覚悟を固める。
自分にとって、一番のやりたいことをするんだ。

「話があるんだ。近くにいるから出てこれない?」

『え……?』

「今から走ってマンションの前まで行くから、降りてきて」

返事を聞く前に電話を切り、俺は地面をける。

走れ、俺。
勢いに乗って、しがらみを捨てて。

彼女のもとまで走りぬけ!