「なんもねぇよ。ちょっと体育祭の時に仕事代わってもらったら奢らされただけで。つか、その噂どのくらい広まってんのかな」

「さあ。少なくとも俺のクラスではもう有名な話」

「頼むから否定しておいてくれ」

「ああ、分かった分かった」


一年のどんな奴に誤解されてもいいけど、サユちゃんに知られたら大変だ。

ランニングをしながら、三階の美術室を仰ぎ見る。
あれから話もできてないけど、サユちゃん一体どうしてる?

夏目もあれ以上のことは教えてくれなかったが、告白の行方はどうなったんだ?

何度か見上げると、やがてサユちゃんが窓際に寄るのを見つけた。

気づかないかとじっと見つめると、やがて目が合う。
そして彼女はフイと視線をそらし、奥へ戻ってしまった。

精神的に力尽きて、俺は立ち止まってうずくまる。


「おい、サトル。もうバテたのか? 早くね?」

「ちょっと、放っておいてくれ」


どうしてこうなってしまったんだ。
一度もつれ出したら、どうやって戻せばいいのかわからない。

関係をリセットする方法があるなら、誰かに教えて欲しい。