校門から教室までの間に、サユちゃんを見つけることは出来なかった。

春休みに、双子の迎えで葉山家に行った時に顔は見てる。
幼い頃の面影は残ったままだったが、輪郭やふくふくだったほっぺたが少ししまったような気がする。変わらなかったのは女の子にしては少し太めの眉と、おかあさん譲りの綺麗な髪だ。

今の彼女の顔はその時にバッチリインプット済みだ。
だから見つけそこなうなんてことは無いはずなのだけど。

まだ来ていないのか。
それとももう教室にいるのか。

同じ学校になったらすぐに会えるって思ってたのに、考えが甘かったかぁ?


 名残惜しむように廊下を眺めて、颯とは教室の前で別れる。

中に入ると俺と同じように、真新しい制服に身を包んだ奴らが一杯だ。見たことある顔も無いわけじゃないけど、話したことのないような同中生だから、知らない奴と大差ない。

 取り合えず、出席番号順に割り当てられた席に座る。
俺の苗字は中津川だから大抵真ん中から後ろの方だ。
場所はなかなか悪くなかった。窓側から四列目の後ろから四番目。

後ろの席の男は、少し釣り目で狐っぽい印象がある。ツンツンと茶髪を立てているちょっとやんちゃ系といったところか。そいつは俺が近づくとニカッと笑った。



「俺、夏目信也(なつめ しんや)。よろしく」

「おう。俺は中津川智。よろしく」


 とりあえず愛想は良さそうだ。俺はほっと一息つく。


「夏目、どこの学校?」


お決まりの挨拶で、俺たちは自己紹介をしはじめた。