「ちょっと、中津川くん?」


苛立った声で、新見は覗きこんでくる。
その頭の向こうに見えた女子生徒二人の姿を見て、俺は息を飲んだ。


「……サユちゃん」


そこには、サユちゃんと和奏先輩がいた。
サユちゃんは俺をじっと見つめたまま、立ち止まっていた。


「サト……ルくん。新見さんと一緒だったんだ」


にへ、と笑おうとしてサユちゃんの顔が変な形で固まる。


「あ、葉山先輩。真木先輩も」


新見の方は俺達のぎこちなさなど意に介さない様子で、普通に話しかけた。


「先輩もおごってもらったらどうですか? 中津川くんに」


悪気なく言った新見の言葉に、サユちゃんは眉を潜める。


「い、いいよ。なんか。……邪魔、しちゃ悪いし」

「ちょっとサユ」

「行こう、和奏」

「ちょ」


サユちゃんは、和奏先輩の腕を引っ張り、彼女にしては高速の歩きでズンズン歩いて行った。


「……なんか勘違いされた?」


あっけらかんと新見が言うので、俺は溜息を吐き出して首を振った。


「いや、いい」

「あっそう」


新見はクリスピーサンドをまた一口食べると、そのまま爆弾発言を投下する。


「じゃあ、このままにするけどいいよね」

「は?」

「私、中津川くんのことは嫌いじゃない」


新見の言ったことが理解できずに立ち止まる。


「は?」

「誤解させたままにするけど、いいわねってこと」


指を突き立てて宣言すると、新見は一気に駈け出した。


「え? オイ!」

「また来週!」


新見の後ろ姿は、どんどん小さくなっていく。


「……嘘だろ?」


俺は自分の身に起きたことを理解できずに、ただその場に固まっていた。