「……なんなの?」
「さあ」
取り残された俺達は、顔を見合わせて呟く。
「まあいいや。はい、私はこれ」
「お前っ、高いやつじゃんこれ」
ハーゲンダッツのクリスピーサンドだ。
「だって人の奢りだもの。高いの頼むの当然」
鬼か。
鼻歌を口ずさむ新見に、心の中でだけ呟く。
俺は安いスイカバーを買い、コンビニをでて彼女に高いアイスを渡す。
「だってこれくらいの労働はしたのよ。一体どこほっつき歩いていたわけ?」
「それは、その」
「どうせ、葉山先輩に会ってデレデレしてたんでしょ」
「違う!」
ホントにそうなら、どれだけいいか。
再び、脳裏に見つめ合う夏目とサユちゃんが思い浮かび、俺は無意識に唇を噛みしめる。
「……なんかあったの?」
クリスピーサンドをかじりながら、新見が俺に問いかける。
いつもよりは優しく聞こえたその声音に、俺は素直に「うん」と答えた。
スイカバーの味がよくわからない。
頭の中がいっぱいだ。
サユちゃんはなんて答えたんだろう。
逃げ出した俺をどう思った?
勝負は勝負。
俺に口出す権利はない。
……だけど、やっぱりあんなふうに逃げ出したことは後悔している。
サユちゃんが俺を見ていたのに。
助けを、……求めていたかも知れないのに。
夏目との約束なんかより、サユちゃんを守ってあげるほうが大切だったんじゃないのか?



