結局、少し待っていても夏目は戻ってこず、俺は新見に脅される形で学校近くのコンビニに来ている。


「どれがいい? 珠子」

「うーん。そうだなぁ」


冷凍ケースに顔を突っ込むようにして新見と珠子がアイスを選んでいる。
少し離れてそれを見ている俺の隣には和晃。
ヤツはガリガリ君で決定らしい。


「悪いな、サトル」

「いや、いいけどさ。お前らいつも三人で帰ってんの?」

「はは、まあな」


笑いに覇気が感じられない。
かわいそうになって俺は和晃の背中を軽く叩いた。


「付き合ってんなら二人きりで帰ればいいじゃん」

「珠子が明菜と居たがるんだから仕方ないだろ。あ! でもそうだな。いいこと思いついた」

「は?」


ニヤリと笑った和晃に、嫌な予感が止められない。
なにか企んでるだろう。


「珠子、決まったか?」

「え? うん。これー。アイスは雪見だいふくだよねー」

「じゃあ俺が買ってやるよ。さすがにサトルに奢らせるのも気が引けるからさ」


おお、いい事言うじゃん、和晃。
と思ったら、和晃はすごい勢いで会計を済ませ、珠子の腕を引っ張る。


「明菜にはサトルがおごってやってくれよなー。俺たち先に帰るから」

「えー? なんで?」


キョトンとした珠子に、和晃が何かを耳打ちする。
すると珠子は嬉しそうに笑うと、


「じゃ、先帰る。明菜またねー!」


と大きく手を振った。