「あ、えっと……」




鞄を引き寄せて教科書やノートを取り出す。

パラパラと教科書を眺めて、思う。




「どこが分かんないっていうのも分かんないレベルに、お手上げです」




自分で言っておいて、顔が引きつる。

だって何年も試験では数学は捨ててきたんだよ?

ここが分からないってハッキリと理解してたら、ちゃんと勉強するよ。




「おー、マジか……」




伸びてきた手が私から教科書を奪う。

じゃあ、どうしよっかなーなんて言いながら今度は先生がページをめくっていく。




「学期末の範囲する?公式覚えちまえば簡単だから、ここ」

「は、はあ……」




綺麗で長い指が示した所に目を向ける。

私にはちっとも簡単そうに見えないんだけど、大丈夫かな……?


だけど難しそうだからヤダなんて言える訳がないし、そもそも私に拒否権なんて無い。

不安な気持ちを抱えながら、頷いた。