「じゃあ、私は教室に戻りますね」




これ以上、先生の顔を見てられなくて私は逃げようとした。

いつまでも弱くて私って、ほんとにダメなやつだ。




「待ってくれ、阿波!」





" 阿波 "


こんなことをしても先生は変わらずに私を呼んでくれるんですね。

たったそれだけのことが嬉しくて、だけど、それを素直に喜べなくなってしまった自分が、状況が、切なくて苦しくい。





「何でこんなこと…」





震える先生の声にギュッと目を閉じて、込み上げてくる感情を押し殺す。




私は、最低なやつなんだ。

私は、酷く醜いやつなんだ。


ここで、泣くのは意味がわからない。



ーー何で、こんなこと。


それは…先生が、好きだから。


好きで好きで、どうしようもなくて。

でも、この想いも行き場を無くして、どうしようもなくて。

でも、そんなこと言えるわけがなくい。




「嫌いだからかな?」




私の口から出た嘘は、これが精一杯だった。