普通にしていれば、こんな風にはならない。

「ひかりと、何かあったの……?」

恐る恐るといった感じで、遠慮がちに岩崎が問いかける。

何か……って聞かれたら、それは。


「……とうとう本気で嫌われたってとこかな」

「え?」

「とにかく行ってやって。あいつ、泣いてるから」

「えっ!?」


たぶん、泣いてるっていう言葉に岩崎はとても驚いた様子で、慌てて俺に背を向けた。

彼女のことだから、きっと理由も聞かず、真っ先に大西を探しに行くんだろう。

そう思って、出て行く背中を見つめることはしなかった……のに、


途中で止まった足音。

顔を上げてみると、教室を出ようとする寸前のところで、岩崎は背を向けたまま立ち止まっていた。

そして、

「……石丸くん」

静かに俺の名を呼ぶと、ゆっくりと振り返って。


「石丸くんは誰か、好きな人とかいるの
……?」