幕末パノラマのレビュー一覧
5.0
ひょんな事から、現代から幕末へと飛んでしまった主人公、春。
新撰組を題材にした小説では珍しい男の子目線。
春の記憶に度々現れる謎の少女。
自分に恋人がいる事は写真から知る事ができた。
だけど、名前が思い出せない。
名前もわからない彼女への思いだけが重なっていく。
そんな彼が幕末で過ごす中で聞いた噂。
自分と同じ流派で刀を扱う少女がいる。
期待と不安が胸中を埋め尽くす。
その少女の正体は…
思いが絡み合い綴られる物語。
是非、あなたの目で見て感じて欲しいです。
このレビューがそのきっかけになればと…
まずは、作者のbaby blueさん、完結おめでとうございます。
“敵同志”の恋。許されない物であったとしても、やっぱりその想いを削ることは出来なかった。
春と真夏の恋。
現代と幕末のパノラマ。
何故自分達が、幕末にタイムスリップしてしまったのか。それは、二人の想いあう心がもっともっと近付くために、というのが一番の理由なのかなと思います。
そして、もう一つの理由は大切な人達と出会うため。主人公の春は、新選組の人達と。真夏は、新選組の敵である吉田利麿を始めとした長州の人達と。二人は彼らの志に惹かれていき、彼らもまた二人に惹かれていく。
もしも激動の時代でなければ、春と真夏と、新選組と長州の人達…。みんなが笑って並んでいる光景が目に浮かんできます。
最後まで仲間との思いを貫き、最後までお互いを愛した春と真夏。
そんな二人が描くパノラマは最高でした。
ぜひ読んでみて下さい。
男性目線という、少し変わった幕末物語。
作者さんが書く物語では、新撰組と、長州という相対している二つの物語が組み合わさっています。
ひょんな事からタイムスリップしてしまった春。
途方に暮れている所、出会ったのは新撰組の沖田総司だった。
記憶に無い少女、写真の中で笑う少女、夢に出てくる少女――――
その少女の素性、未来の流派の合気剣の使い手。
様々な謎が、尾を引いて物語の切なさを創り出しています。
そして、ラストの哀しい別れ。
『生きていてくれてありがとう』
その言葉に、私自身も沢山の思いを味わいました。
未来での話も、辛い思いをしたからこその二人で作った物なのだろうと。
情景描写も、心理描写も、会話、構成、全てにおいて素敵な物語です。
生意気なレビューですが、本当に感動しました。
ぜひ、ご一読下さいね!!