フェンスもたれて涙と鼻水でぐちゃぐちゃな僕は、考えるどれくらい呑んだのだろうか?





芋焼酎を五合は呑んだそこまでは覚えている。


その後に甘いカクテルを呑んだが一体何杯呑んだのかは、覚えていない。


会計の時に、よほどふらついていたのか馴染みの無口なマスターが珍しく大丈夫か?と聞いてきた。


僕は、うるせえよと答えた。


店から出る為にエレベーターに乗ったのだが、中にこもった様々匂いに思わず気分が悪くなった。


女の香水の匂い男の香水の匂い或いはお好み焼きのソースの匂いそして男と女の惨めで、哀しい欲望の匂い。


エレベーターを降りると秋の風が気持ち良くて様々な匂いや思惑を吹き飛ばしてくれるような気がした。


ゆっくり歩いて帰る家まで五百メートル程だ。


秋になろうとしている空気を感じたかった。


外は明るくなりかけている。


歩き始めて完全に酔っている事に気付いた。


足に力が入らないのだ。