*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

母が首を傾げて汀と灯を見る。




汀は先を促すように、こくりと頷いてみせた。






「………それでもね。


愛する人が他の女の人を娶るなんて、つらいものね。



悲しくって、中の君はやっぱり、月を見ながら嘆いているの。




それを見て、今度は、中の君の年老いた女房がこう言うのよ。





『今は、入らせ給ひね。


月見るは、忌み侍るものを』




ーーーすぐに、中にお入りください。


月を見るのは忌み嫌われておりますのに。





女房は心配で仕方がなかったのね。



大事な姫君が、悲しみに暮れて嘆いてばかりいるんだから。





きっと、おそろしくなったんだわ。



大事な姫君の心が、悲しみで壊れてしまうんじゃないか、って…………」









汀は押さえた唇から嗚咽を洩らした。





父に見捨てられたことを知った時の、母の心を思って。