*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語

「あっ、灯!!」





自分の名を呼ぶ子供の声に、灯は振り返った。




十歳にも満たない小柄な少女が、灯の方に向かって駆けてくる。





「小桃」





灯が呼びかけると、お下げ髪少女ーーー小桃は満面に笑みを浮かべて、灯の胸に抱きついた。






「灯ーーー!!

どこ行ってたの!?


ずっと会えなかったから寂しかった!!」






「いや、ちょっと………。


仕事の最中にしくじってな」






「ええっ!?

灯がしくじるなんて!!


一体、どんな強敵が現れたの!?」






「………まぁ、なんというか、手強かったよ、あいつは………」






灯はしみじみとした様子で、遠い目をして呟いた。