「パンダ気に入った?」



部屋に入って扇風機をつけてから、飲み物を用意してると、本棚に飾ってあるぶさいくなパンダを暁明が指差した。



「え......うん、まぁ......」



愛着はわいたものの、はっきり気に入ったとは言いたくない。


そんな曖昧な答えでも暁明は満足したようで、飲み物を机の上に置いて彼の隣に座ると抱き寄せられる。


こうしてる時が一番幸せだ、と思う。

ちょっとした嫌なことがあっても、暁明に腹が立つことがあっても、ぎゅってしてキスされると全て許せてしまうから不思議。


目が合うだけで、触れているだけでこんなにも幸せな気持ちになったのは、暁明が初めて。

付き合ったことは初めてじゃないけど、こんなに誰かを好きになったのは暁明だけ......。


暁明よりかっこいい人も優しい人もたくさんいると思うのに、どうしてだろうって自分でも思うけど。

それが、どうしてか。
明確な答えは出せないけど。

それでも私がずっと一緒にいたいと願うのは彼だけだった。